■ 不快指数は上昇中

 首に絡み付く腕の感触が酷く不快だ。

 忍足に抱き込まれる体勢の跡部は居心地が悪そうに眉間を寄せた。
「離れろ」
「嫌や」
 忍足はさらに腕に力をこめ跡部を羽交い締めにしてくる。それを阻止すべく跡部は体を捻るが忍足のホールドは思いの外固くなかなか抜けれそうにない。
「だって景ちゃんが寂しそうにしてるんやもん」
「してねぇよ!」
 すかさず否定するが忍足は聞く耳を持たない。
「景ちゃんが嘘吐いたら俺すぐわかんねんで」
 その自信は一体どこから湧き出てくるというのか。跡部は不機嫌を全面に押し出して絡み付く忍足の腕を掴む。
「………」
 あながち間違っていないところがさらに腹が立つ要因である。
「おまえが女に手だしてっからだ馬鹿野郎」
「……へ?」
 維持でも言ってやるものかと腹をくくっていたのに、本心はいとも容易く口からこぼれ出ていく。
「え?何のことやそれ、」
「とぼけてんじゃねぇ」
「いやほんまわからんねんけど」
 跡部があからさまにしまった、という顔をしたので忍足は目敏く気付いて詰め寄る。
「何、どういうことか教えてもらおか景ちゃん」
「別に…なんでも」
 ない、と振り返り様に言いかけた途中で唇を塞がれる。
「―…んんッ、ぅ――っ!」
「正直に言わんとこのまま犯してまうかもしれんなぁ」
「なにをわけわかんねぇこと…っ」
 そんなことを言っている内に忍足の手はするりとシャツの裾を捲りあげ中に侵入してくる。
「やっ…め――…!」
「言う気なった?」
「言うからやめろ…ッ今すぐ!」
 忍足は素直に手をひっこめると跡部の体を反転させてじいっと目を覗き込む。
「で、なんなんや?」
 跡部は躊躇いをみせつつ忍足を睨む。
「おまえ、先週女と二人で帰ってたじゃねぇか…っ」
「へ?」
 忍足の表情が固まる。
 ほら、やっぱりと吐き出そうとすれば刹那忍足の笑い声が響き渡った。
「ちゃうちゃう!あれは男やで!」
「はぁっ!?」
「だ―か―ら―。一緒に帰っとったん、あれは男や」
 状況がまったく把握できない跡部はぱちぱちと何度も目を瞬かせる。
「女装が趣味の奴がおってな。一人で外に行くん不安やからいうて付いて来てくれて頼まれたんや」
 忍足は堪えきれないらしい笑いを噛み締めながら話を続ける。
「別に浮気とかとちゃうし。俺は景ちゃんにゾッコンやさかい」
「……っ!」
 あまりの恥ずかしさに跡部は忍足の背中に腕を回し顔が見られないように胸に額を押し付けた。
「景ちゃんがヤキモチ妬いてくれるなんて嬉しいわ」
「うるせぇ!!」
 黙らせる意味で塞いだ唇も忍足を喜ばせる結果に終わり、不服な面持ちで跡部は忍足を睨み上げた。
「そんな上目遣いせんとってや」
「あほか、」





end.
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勘違いした跡部が恥ずかしがるのを書きたかったんです。


2012/3/4
御題はDiscolo様より

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