■ キスまであと5センチ!

 ぐい、と引き寄せられた瞬間にかちりと合った視線に忍足は思わず息をのんだ。

「なんや景吾、やらしい目してる」
「なにまたわけわかんねぇこと言ってんだおまえは」
「それ、無意識なん?」

 相変わらず噛み合わない会話にはもう慣れた。
 腰に腕を回して身動きを封じれば、跡部は居心地が悪そうに身を捩らせる。

「景ちゃんが俺の腕ひっぱったんやんか」
「別になくなるわけじゃねぇんだから引こうが押そうが関係ないだろ?」
「そやけど、」

 構って欲しさ故の行動というのがわかっているだけあって忍足は理性をキープするので結構必死だった。

「キスしてもええ?」
「嫌っつってもおまえはやるだろ」

 わかってるやん、と言いつつ額に口付けを落とす。
 目の周りを縁取る睫が綺麗で、無意識にごくりと唾を飲み込んだ。

 腕の中の跡部の前髪を軽く撫で上げ、忍足は満足げに息をもらす。

「そんな無防備なカオ、余所者にみせたら絶対アカンで」


(そういう可愛いトコは、俺だけが知ってればええ)




end.
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2012/2/10
御題は自惚れてんじゃねぇよ様より

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