■ 目が眩むような衝動

週末に氷帝に練習試合をしにいくことになり、真田と二人で下見に行くことになった。
遠いわけではないが、けして近いとも言えない距離。軽く話し合った結果、氷帝までは普段はバスを利用している幸村と徒歩で来ている真田にはあまり縁がない電車を使って行くことになった。

「乗り換えは一回だし、一時間ぐらいで着くと思う」

割と大きめの駅は人で溢れていて、慣れない人混みに真田が視線をさまよわせている。

「くれぐれもはぐれないでよね」
「それは此方の台詞だ」

ようやく改札までたどり着き、幸村が料金表を眺めながら隣で固まっている真田をつついた。

「なにしてるの真田、はやく切符買わないと電車行っちゃうよ」
「…その……この機械はどのように使えばよいのだ?」
「え。もしかして…わかんない?切符の買い方」

こくりと肯く真田に幸村は思わず漏らしそうになった溜め息をなんとか飲み込んだ。

「ん―じゃあ俺のいう通りにして。はいまずお金をいれます。××駅までは――…」

幸い後ろに並んでいる人はいなかったので、幸村は一から丁寧に真田に説明する。
正直覚束ない手つきでボタンを押す真田に幸村は笑いを堪えるのに必死だった。

「切符でてきた?」
「か、買えたぞ幸村!」
「なんやかんやで真田ってぼんぼんだよねぇ…」

なんとか電車にも間に合って事態はひと段落し、買いたての切符を眺めてはしゃく真田の様子を見ながら幸村は小さく笑みをこぼした。



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2012/5/17
御題は誰花様より

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