■ 迎えにきたよ

※死ネタ含みます。


失われていく血と体温を体中で感じる。

無機質なアスファルトに横たわった感覚はお世辞にもよいとは言えない。
遠くの方でなるサイレント音。耳元で何かを叫ぶ蓮二の声。
きっと死ぬのだろうな、と意識の隅でそう思った。あまりに呆気ない死に思わず笑い出しそうになったが口から零れるのは鮮血ばかりで、残念ながら喉からは掠れた声だけしか紡げない。
もはや痛いという感覚さえもなくなった。

――嗚呼、空が蒼い。

偶然とはいえ、今からそちらにいく。予定より早いが、それでも待たせてしまってすまなかったな。

――幸村。


小さく口元に笑みを浮かべ、真田はゆっくりと目を閉じた。
最期に眼前を彩っていた空はどこまでも澄み渡り、思わず涙が滲むほどに非道く、綺麗だった。


* * *


静まり返った病室には、一応の生存を確認するかのようにぴ、ぴ、と無機質な機械音が規則的に響いていた。

真田が交通事故に遭ってはや一週間。なんとか一命は取り留めたものの、未だに目を覚ます気配はない。
「ふくぶちょぉ……っ」
目を真っ赤に腫らした赤也の目尻からまたひとつ、透明な粒が溢れる。他のレギュラー陣も俯いたまま、誰一人として口を開こうとしない。
状況は絶望的としか言えなかった。

そんな状態が大体一時間弱続いた頃だったろうか。
そんな中突然柳が顔をあげ、真田の枕元を凝視する。周りもつられて顔をあげた。

「――…ッ…!?」

その瞬間は絶句、という単語がその場でいちばん適切な語句だといえただろう。
なぜならそこには、この場にいるはずのない人物が立っていたのだから。

「やぁみんな、久しぶり」


幸村精市。


半年前に死んだはずの幸村が、柔和な笑みを浮かべてそこにいた。


[ prev / next ]

38/303
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -