■ 次は君がドキドキする番だよ



ぎしりとベッドが軋みをあげて、お互いを繋いだ銀糸がきらりと光った。

「ん…ン…ッ」

くぐもった声が漏れて、汗ばんだ額に触れるだけのキスが降る。

真田と交わすキスはひたすら長い。散々キスだけして終わるなんてこともザラだ。体を繋げるだけがすべてではないし、幸村もそれでいいと思っている。不純異性交遊ならぬ不純同性交遊は中学生である幸村たちには知るのが少々早すぎる領域だ。



「……と、言いつつも興味はある、と?」
「まあそういうことなんだけど…」

柳が隣で小さく溜め息を吐くのが聞こえ、怒られるかな―と内心身構えたがそんな予想とは裏腹、柳はかなり意外な言葉を口にした。

「向こうが仕掛けてこないのならば此方から誘えばいい。いわゆる据え膳、というやつだ」
「あの超鈍感真田が据え膳に気付くかどうかが問題だよね、」
「大丈夫、俺がなんとかしよう」

柳が確信めいた表情をしていたのできっと心配など無用なのだろう。

「じゃあ今度の日曜日に実行でいいかい?」
「ああ、それまでには余裕で準備も間に合う」



そうして幸村自身は何もしないままに日曜日が訪れ、冒頭に戻るわけだが。

いつもならキスして終わり、しかし今回ばかりはそんなわけにはいかない。
幸村が自らシャツのボタンを外そうとすればその手を真田に制止された。

「なにをするつもりだ、幸村」
「え、据え膳だけど?」

さらりとそう言ってやると真田は慌てた様子で幸村の頬を両手で挟んだ。

「もしかしておまえ…他の輩と関係を持っているのではあるまいな」
「今までの流れでなんでそんなぶっ飛んだ思考になるのかな」
「い、以前のおまえはその様な女みたいなことは口にしなかった」
「あのねぇ真田。俺たち恋人同士だってことわかってる?」

真田が迷いなく首を縦にふる。まあ躊躇われても困るんだけれど。

「好きなもの同士がお互いを求め合うっていうのはそんなにおかしいことなのかな?」
「そ、それは……」

視線を宙に泳がせる真田を追い討ちとばかりに幸村は抱き締める。
そうして耳元で小さく囁いた。

“だいて”

ただ、その一言だけ。




理性が瓦解するのは一瞬だ。お堅い真田を言いくるめれたのもきっと柳のおかげである。
お礼になにをしようか、と考えつつ廊下をすたすたと歩いていると丁度いいタイミングで柳が向こうから歩いてくるのが見えた。

「おかげ様でうまくいったよ」
「それはなにより……と言っても、俺は大して何もしていないんだがな」
「え?何か前準備をしてたんじゃないの?」
「いいや特になにも」


柳は目を丸くする幸村にひとつ笑みをこぼして、つられて幸村も笑った。



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2012/4/27
御題は魔女のおはなし様より

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