■ 口付けならご自由に
ちょっとしたスキンシップで相手の気を引こうとするのはある意味で本能的行為なのかもしれない。
帰り道で手を繋ぐだけでもどきどきしていた時代は終わり、今やキスだけでも足りない。
だからといって自分から情事に誘うのは嫌だし、真田から誘ってくるのを幸村はじっと待ってる。きっとこの状態があと二、三年は続くのだろうが正直それでもいいと思っていた。
「幸村……その、だな」
いつもなら何事でもすぱっと言い切ってしまう真田が珍しく口ごもっている。
よっぽどの話なのだろうか。女になったとかしっぽが生えてきたとかそんな話だったりして、なんてありもしない妄想をし始めたところでようやく真田が口を開いた。
「俺に、抱かれてほしいのだ」
「……は?」
思いもしていなかった真田の申し出に幸村は一瞬硬直した。
「お、俺とてこれ以上の我慢は少々辛いのだ」
「……本当に?」
「それは肯定と受け取ってもよいのか」
「俺は真田がそう言いだしてくるのをひたすら待ってたんだよ」
ここでする?と聞いても真田からの返事はなく、代わりに床に押し倒された。
部室でするのは御法度かなぁなんて思ったけれど今は流れに身をまかせてしまおうと思った。
口付けならご自由に
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御題は魔女のおはなし様より
2012/4/26
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