■ ねぇ、くちづけは今して

 奥手の真田に迫るのは楽しい。

 手を繋いだだけで目も合わせられなくなる。そんな真田を可愛い、と思うのは俺だけかもな、なんて思ったけれど蓮二も真田のことを可愛いといったのでやはり幸村の感覚は間違っていなかったのだろう。

「ねぇねぇ真田、好きっていってよ」
「……は?」
「だ―から、好きって。はい、せ―の!」
「おまえが突拍子のないことをするのには慣れていたつもりであったが俺もまだ経験が足りないようだ」
「つまりはいえないと?」
「そういうことはそう安々と言っていいものではなかろう」
「言ってもへらないのに」
「もしかしたら減るかもしれないではないか」
「へるってどんなふうにさ」
「口の先からなくなる、とかだな」
「……真田って時々電波になるよね」

 じゃあね―と妙に間延びした口調で幸村が何かを悩む素振りを見せる。

「じゃあキスしようよ」
「先程よりハードルが上がっているではないか」
「俺基準ではさっきよりやさしいのです」
「俺が承諾するとでも?」
「だって真田は俺が好きでたまらないから、なんでも言うこと聞いちゃうんだ」
「……たわけが、」

 数秒後に触れるキスが待ち遠しくて、目を閉じた。





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2012/4/25
御題は魔女のおはなし様より


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