■ きゅん、てするの


 真田は幸村と二人きりになった時だけ己の本性を少しだけ垣間見せる。

 後ろからぎゅう、と抱き締められて首筋に吐息を感じた。それが妙にくすぐったくて、幸村は身を捩る。
 真田はそれさえもできないように幸村の腰をがちりと固定したから、真田の表情を伺い知ることは叶わなかった。

「なに、どうしたの真田」
「最近は二人きりになる機会がめっきり少なくなったからな……こうでもしないとやってられん」
「おや珍しい、今日はやけに素直じゃないか」

 くすくすと幸村が笑うと真田はそれが気に食わなかったらしくむっとした表情になった。

「真田の独占欲ってほんと俺と比にならないよね。まぁそれはそれで嬉しいんだけど、」

 けして幸村の独占欲が希薄なわけではなく、ただ真田が尋常でないほどに妬きもちやき、というだけの話だ。
 幸村はそれを苦痛に思うこともないし、むしろ喜びさえ感じている。お互いがお互いにゾッコンであるのはよいことで、幸せなことなのだ。

「気はすんだ?」
「……もう少し足りん」
「じゃあうち来る?」
「そうさせてもらおう」

 いつもなら結構な時間を要するのに真田の答えはほぼ即答だった。

「じゃあはやく着替えていこっか」
「うむ、」

 幸村は軽く鼻歌を交えながら、真田の背中にそっと抱き付いた。





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2012/4/25
御題は魔女のおはなし様より


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