■ もしも、とかいらない



 もし幸村が女で、真田と結婚できたならきっととびきり可愛い子どもができるだろう。

 名前はどうしようか。男の子だったら、女の子だったら。そんなありもしない“もしも”を考えながら、幸村は夢想に耽る。
 人間っていうのは精子と卵子がこんにちわしてできるものだから男同士で子どもは十中八九絶対に生まれない。生む器官がないのだから当たり前といえば当たり前の話だ。
 それでもそんな“もしも”を考えてしまうのは何故なのだろう。
 真田と幸村の関係はあまりにも非生産的で、ある種愛でしか成り立たないといえる。いわゆる子どもとは愛の結晶、男女の関係そのものなのだ。
 それがないということはつまり関係にカタチを求められない、ということで。
 別にそうだからといって今の関係が崩れるわけでもない。むしろカタチに頼らなければいけないほどの状況でもない。
 幸村は真田の事が好きで、真田も幸村が好き。この相互関係がある限り恋人という位置は揺らがないのだ。

「真田は、俺のこと好きだよね?」
「……勿論、」

 真田は言葉で愛は示さない。否、示せない。だからこそいつも行動で示してくる。
 たった今の、口付けみたいに。

 もしかしなくても、幸村に“もしも”なんて必要ないのかもしれない。


 そう思えたら、とびきりの幸せ。



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2012/4/13
御題は魔女のおはなし様より


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