■ 無用心、隙だらけ
真田が上の空といった感じに空を眺めていた。
ぽっかりと浮かんだ雲は風にゆるゆると流されていく。
それを食い入るように真田は見上げていたのだ。
「あの雲、おいしそうだね」
真田の顔が僅かに幸村に向けられるがすぐにまた空へと戻す。
「……ああ、そうだな」
まさか真田が肯定してくるなんて思っていなかったから、驚いて今度は幸村が真田を見つめる。
「どうせ真田のことだから小学生のようなことを言うな!たるんどる!とか言うんだと思ってた」
「……俺とて童心を忘れたわけではない」
「ふぅん。なんか、意外」
ふわふわ浮かぶ雲みたいになんだか気持ちも上昇ぎみで、幸村はぼんやりとした思考を真田でいっぱいに満たす。
「あんまし上ばっかり見てると、いつか転んじゃうよ」
「そんなときには、おまえが手をとってくれるだろう?」
「まぁ、そうだけどさ」
一瞬の間をおいて、どちらともなく笑い出した。
心地よい距離感は近付きも遠ざかりもせずにすぐ側にある。そのことがただただ幸せなのだと。
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2012/4/11
御題はJUKE BOX.様より
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