■ 唇に色付くそれが気に入らない

 女の子なんだからお洒落とかお化粧とか、勿論興味がある。
 恋人がいるなら尚更、恋人に可愛い姿を見せたいというのは誰しも考えることであると思う。
 たまたま妹がリップグロスをもってたものだから幸村は試しに借りてみることにした。
 今日は今から真田の家に予定であるし、真田の反応も少し気になったので軽く大人になった気分で家を出た。

「お邪魔しま―す」
 毎週のように訪れている真田の家。慣れた足取りで真田の部屋までいくと荷物を放ってベッドに転がった。
 真田の家はでっきり布団を床に敷いて寝ているものだとばかり思っていたが、真田の部屋の隅にはわりと立派なベッドが鎮座していた。
「真田の匂いがする―」
 枕に顔を押し付けていると真田が呆れた様子で溜め息をついた。
 しばらくそのまま真田のベッドを堪能していると、背後からおもむろに真田が覆い被さってくる。
「おまえ、口に何かつけているのか?」
「うん。妹に借りた」
 うつ伏せにしていた体をひっくり返されて、リップグロスののった唇を撫でられる。
「光っているな、」
「ラメ、入ってるからね」
「らめ?」
「ほら、きらきら光ってるこれ」
 真田の指先を唇に押し当てて笑ってみせると真田の頬が僅かに赤く染まる。
「気に食わんな…」
「え、なにが?」
「それ以上可愛らしくなれば、変な虫が寄ってきてしまうだろう」
 神妙な面持ちでそんなこというもんだからなんだか恥ずかしくなって顔をそらしてしまう。
「そ、そんなこと真顔でいうな馬鹿…っ」
「本当のことを言って何が悪い」
「……真田のそういう所、好きだけど苦手」
「それは喜んでいいのか…?」
「あまりに嬉しくて頭の容量がいっぱいになるの!」
「では幸村の頭の中は全部俺、ということだな?」
「つまりはそういうこと!」
 軽く背中を浮かして真田にキスしたら下唇を甘噛みしてぺろりと舐められる。
「真田の舌もピンク色だ」
 そのまま抱き合って何度もキスして互いの唾液でぐちゃぐちゃになって、唇を話す頃にはすっかりリップグロスはとれてしまっていた。
「……っん、はぁ…ッ」

「やはり元の色が一番綺麗だ」





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御題は魔女のおはなし様より
2012/4/3

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