■ 無自覚に甘やかしてるって気付け

 例えばそう、二人でおやつを食べる時に奇数個余ってしまったとしよう。その時に幸村にひとつ多くくれるのが真田だ。
 なんだかそれが当たり前みたいな、その状況が酷くこそばゆい。

「無自覚にやってるっていうのがなんともいえないっていうか……」
「弦一郎はそういう奴だからな」

 真田は人を甘やかすことを不得手だというが、それは幸村には適用されない。


「幸村、少しこちらに来い」

 真田に手をこまねかれて言葉の通りに真田の方へ寄ればぐい、と腕をつかまれた。そのまま真田に勢い良く引き寄せられて肩に顔があたる。
「えっちょ……っ」
 思わず真田の両肩をつかんだら真田の匂いがぶわっと鼻孔に広がって気恥ずかしいような、嬉しいような気持ちでいっぱいになった。
「な、なにするの急に…っ!?」
 真田の骨ばった手が幸村の後頭部に触れていよいよ理性がやばい。
「髪に塵がついていた」
 けろっとした顔で真田がそう言うものだからいよいよ面食らって一人赤面しているのが酷く馬鹿馬鹿しくなってしまった。

「―……あんまり甘やかすな、馬鹿」



***

「……蓮二の言う通りにしたが怒られてしまったぞ……?」「精市なりの照れ隠しだろう、結果的にかなりいい方向に進んでいる」
「そ、そうなのか?」
「案ずる事はない、安心しろ」



 一人で悶々と悩む幸村を余所に真田と柳の一方的な会合は静かに幕を閉じた。



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2012/3/28
御題はポケットに拳銃様より

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