■ 僕らの歩むその先は
※流血、殺人描写有
※CP要素薄
※幸村が病んでます。
鼻先を掠める硝煙の臭いが不快で、眉を顰める。
頬にべっとりとついた血を拭うのも億劫で、そのまま放っておいたらすっかり乾いてしまって後で湯呑みするのが面倒臭いなぁと頭の隅でそんなことを考えていた。
「幸村、」
背後から聞こえた真田の声に幸村は振り向くことなく手を挙げて合図する。
「敵の大将の首はとった、隊を引き上げるようにと殿からの御命令だ」
片手で苦無を回して弄んでいた幸村の目がすぅ、と細められる。
「そ。じゃあさっさと引き上げちゃうよ―」
ついでに伝令の仁王に情報を錯乱させておくように伝えておいて、と言って幸村は次の瞬間には真田の前から姿を消していた。
「相変わらず帰るのは早いこって」
溜め息とも似つかぬ息を吐き出して真田は宙を仰ぐ。
戯れに殺した足軽の死体の上で満悦気味であった幸村は余りにも呆気なく終わってしまった大仕事に不満を隠せずにいた。
「やっぱり優秀すぎるのも困りものだよねぇ…」
計画通りに行き過ぎてしまうと、どうしても物足りなさを感じてしまう。
負け戦など経験したことなどない幸村は立海を上回るほどの実力の城を密かに探しているのだが、未だに一向に見つかる気配はなく。
「足りないなぁ……」
幸村の呟きは風にかき消されて、残ったのは血と硝煙の臭いだけで。
幸村が満たされることはない。
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幸村が忍隊の隊長で真田が副隊長っていう設定でした。
書いてる本人が一番楽しかったので調子にのってシリーズ化するかもしれないです(爆)
2012/3/11
御題は邂逅と輪廻様より
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