■ お伽話のような
幸村は時たまに突拍子もないことを言い出す。長年の付き合いですっかり慣れてしまってはいるが、幸村の思考回路は未だに掴みきれないところが多々ある。
天然、という一言では言い表せない、その微妙に一線を画した場所に類する幸村はいつも思いもよらない方向へと会話をとばしていく。
「ねぇ真田、真田は前世って信じる?」
突然思い出したみたいな口振りの幸村は好奇心に満ち満ちた目で真田を見つめてくる。
「俺は前世とかそういうものは信じていない」
「そんなカタいこと言わないでさ、なんだと思う?」
あくまで答えろ、ということらしい。
しかし真田はそんなことを考えたことはないし、何と答えてよいのかまったくといっていいほど分からなかった。
「例えばそう、動物、人間……或いは植物や、建物とか空とか雲とか」
一つの個体、抽象的なもの。様々なものを口にしては幸村は宙に指先で軌跡を描いていく。
「いざ考えてみると難しいものだな……」
腕を組みながら唸る真田に幸村も首を捻って考える。
「そうだね―…真田は……綿菓子、とか?」
「綿菓子?」
「そ。なんかみーんないっぺんに包み込んじゃう感じっていうの?そんな感じ」
どちらかというと己にも他人にも厳しい真田は包む、というよりかは周りの者を律するタイプだ。優しさなんて甘いものは好まないし、厳しく躾られたせいで優しさのベクトルが周りと少々ずれている。
「そんなことを言ったのはおまえがはじめてだ」
「まぁ、あくまで俺はそう思うってだけの話だよ」
そう言ってはにかむ幸村はまるで向日葵のようだな、と。
そんな考えが頭を掠めて、きっと幸村の前世は向日葵なのだろうと一人で勝手に納得していた。
お伽話のような
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2012/3/15
御題はJUKE BOX.様より
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