■ 持て余した左手
真田は恋愛に関しては超が五つ付く程に鈍感だ。恋愛経験値は小学生レベルに匹敵、いやもしかしたらそれ以下かもしれない。
これはわざと大袈裟に言っているとかそうわけではなく本当に事実なのだ。
キスとかセックスとかそういう以前の話、手を繋ぐのもままならないとはどういうことなのだろう。
恋人同士ならばやっていて当たり前の行為、この認識こそ間違えているというのか。
試行錯誤の上にようやく辿り着いた関係性に一息つくどころか課題が山積みにありすぎて既に目眩でどうにかなってしまいそうだ。
真田は見つめるだけでも顔を真っ赤にして、俯いてしまう。
いい加減にじれて無理矢理手をとったこともあったけれど真田が硬直して動かなくなってしまったのであえなく断念。しょうがないから手が触れるか触れないかの微妙な距離で留まっている。
「真田は俺のこと好きじゃないの?」
「む、別にそういうわけでは……」
「キスしようとかセックスしようとか言ってるんじゃなくて、俺は真田と少しでも繋がってたいの!」
「せっ…!?」
「ちょっとした下ネタにいちいち反応するな馬鹿!」
じれにじれた結果の幸村の怒りの応酬に真田は再び固まりかけるがなんとか耐えきったらしく幸村に手を握られたままゆっくりと伏せていた顔をあげる。
「その…な、おまえに触れられていると歯止めがきかなくなるというか…思わず過ちを犯してしまいそうになるから…その、」
「別に犯したっていいじゃないか、それぐらい」
「そう軽々と…」
「軽くなんかない!!」
幸村の目は真っ直ぐに真田を見つめ、逸らすことを許さない。
「真田のことが好きで仕方がないのに、触れちゃいけないなんてそんなの意味わかんない…!」
ぐい、と腕を掴まれて怯んだ隙に幸村の唇が真田のそれに触れる。何者にも形容し難い柔らかい感触が真田の理性のリミッターを外そうとする。
「おまえに触れると途端に壊れてしまいそうで……」
こわかったんだ、と小さく零す真田に俺はそんなにやわじゃないよ、と微笑んでみせた。
ガラス製の壊れモノを扱うみたいに真田の手がゆっくりと頬に触れて、甘いキスをもう一度味わう。
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2012/3/9
御題はDiscolo様より
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