■ 触れた君にだけ伝わる鼓動

 綺麗に整えられた爪を指先でなぞって、もしこの指でぐちゃぐちゃにされたらどんな気分なんだろう、なんてことを考えた。テクニックで言えば柳は立海で一番秀でている、と仁王は思う。

「俺以外のことを考えるなんて、随分と余裕だな雅治?」

 くるりと視界が反転して、部室に備え付けの簡易ソファがぎしりと軋みをあげた。仁王は何度かぱちぱちと目をしばたかせて、柳を見つめ返す。

「何を考えていたんだ?」
「さんぼうのこと、かんがえとった」
「ほう……どのようなことを考えていたんだ?」
「それは……」

 柳に犯されるのを想像してました、なんて恥ずかしくて言えない。とんだ淫乱だ、と柳からも軽蔑されてしまうに違いない。

「言えないようなことか?」
「あんまし……いいとうない」
「……おまえのことだから俺に犯されるところでも想像していたんだろう」
「……っ!?」
「おっと、図星だったか?」

 緩く口元に笑みを描きながら柳が意地悪く笑う。

「ならばお望み通りに抱いてやろう」
「えっ遠慮しておくき!」
「そう遠慮するな、部室はすでに施錠済みだ」

 俺は元からそういうつもりだったしな、と言って柳は下唇をぺろりと舐めた。



end.
2013/7/1
御題:自作



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