■ (うわあ、いかにも今してましたって顔)
※佐伯がU17に参加、植物組と同室設定
「サエ、顔赤いけど。大丈夫かい?」
部屋に帰ってきた佐伯の頬は心なしかほんのりと赤く色づいていて、不二はなかば悪意をこめてそれを指摘する。嫉妬と言われればそれまでなのだが、この際何を言われたってかまわない。大事な幼なじみが他の男にとられた―…佐伯に対して恋愛感情こそないが友情の一線をやや上回った独占欲は有しているのだ。
「平気だよ不二。ありがとう、心配してくれて」
明らかに練習とは別の疲労が浮かんでいる佐伯は無意識にか首もとを手のひらで隠している。黒羽に痕でもつけられたんだろう。着替える現場を見るのは同室の不二、白石と幸村だけだがやはり情事の痕跡を見られるのは気がひけるのだろう。
「黒羽に会ってきたの?」
佐伯の表情が一瞬強張って、ぱちぱちと数回まばたきをしたあとにそのままうつむいてしまう。
(ふふ、いかにも今してましたって顔)
図星をつかれて返す言葉が見つからないのか、耳まで真っ赤にした佐伯はなかなか顔をあげようとしない。
「……やっぱり不二は誤魔化せないな」
「当たり前だよ。何年一緒にいると思ってるんだい?」
不二は二段ベッドの下に腰掛ける佐伯の隣を陣取るとおもむろに右手を握る。
「明日も練習があるし、今日ははやく寝てしまった方がいいんじゃないかな」
不二はそのまま佐伯のベッドに潜り込むと、有無を言わせぬままに佐伯に向かってさあおいで、と腕を広げてみせる。
これは幼なじみの特権というやつだ。不二は佐伯の腰に腕を回して、それにならって佐伯も腕をのばしてくる。
「サエ、」
「なんだい不二?」
不二は佐伯の額にそっと口付けて、もどかしさを微笑みでかき消した。
end.
2013/6/1
御題:TOY
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