■ 「狙ってねーよ、睨むな!」

 差し込み口からのびたストローの先から紙パックの中身がみるみる間に吸い出されていく。側面のへこみ具合をみるに今の一瞬で中身はすべてブン太の胃の中へと旅立ったのだろう。育ち盛りとはいえブン太は食べる量も飲む量も人一倍多い。ジャッカルより小柄であるというのに食べる量はジャッカルの二倍を優に下らない。
「あんま食べすぎたら午後の授業ツラくなるぞ?」
「授業中に腹減る方がよっぽどツラいっての!」
 そう言いながら本日5つ目の菓子パンの袋をあけぱくりと口にする。食べる姿はさながらハムスターと言ったところか。もしかしたらブン太の胃袋は四次元的などこかに繋がっているのかもしれない。
「おいブン太、口に食べカスついてるぞ」
「え、まじ?どこ?」
 ブン太は口元を片手でごしごしとこするが残念ながら反対側である。ったくしょうがねぇな、とジャッカルがブン太の口を拭ってやるとブン太はありがと、と言ってあろうことかジャッカルの指先についた食べカスを舐めとった。
「ちょっブン太何して……ッ!?」
「だってもったいねぇだろぃ」
「だからって指なめるな!」
 呆れ気味にジャッカルが食べ終えた自分の弁当箱をしまおうとしたその時だ。背後から思わず身震いしてしまいそうな殺気を感じ、ジャッカルはおそるおそる肩越しに振り向く。

「ジャッカル、俺のブンちゃんなにしとんの?」

「あっ仁王!」
 ぱっとブン太の顔が明るくなるがジャッカルはそんなブン太とは裏腹顔が一気に強ばるのが自分でもよくわかった。
「一緒に飯食ってただけだよ」
「へぇ……」
 こいつ、絶対信じてねぇな。ジャッカルは仁王の目がわずかに細められるを見ながらバレないよう小さく溜め息を吐き出す。
「一応いっとくけど、ブンちゃんは絶対ゆずってやらんから」
「狙ってねーよ、睨むな!」
 本当に仁王は嫉妬深いというか、ブン太絡みなると大分性格が変わる。まったく融通がきかないというか、まあそれだけブン太のことが好きだということなのだけれど。


「愛されてんな、おまえ」
「あたりまえだろぃ」

 ブン太が笑顔でいてくれるならそれでいいか、と。ジャッカルはほんの少し微笑んで、くしゃりとブン太の髪の毛を掻き乱した。



end.
2013/4/23
御題:TOY



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