■ あなたの熱でとかして
手を合わせて、指を絡めて、見つめ合って、そしてキスをした。
最初は恥ずかしくてなかなか目を合わせることができなかったけれど、優しく抱き寄せられて耳元で好きだ、なんて囁かれてしまえばあとは堕ちてしまうしか手はないではないか。
不器用なようでいて繊細な指先は佐伯の輪郭を緩くなぞり、唇に添えられる。黒羽の唇が佐伯を誘うように唇の端を軽くはむ。薄く口を開けば躊躇なく舌が絡み、瞬く間に快感の淵へと追いやられる。
「……んッ、バネさ…っ…」
上手く息継ぎができずに佐伯が小さく喘げばあまりにもあっさりと唇が離れ、刹那に視線がかち合う。
「……やめるか?」
「………駄目、もっとしてよ」
淡く好調した頬の赤みは消えないまま、今度は佐伯から黒羽の唇を奪った。ちゅ、ちゅ、とリップ音をたてながら交わされるキスはお互いの熱を徐々に煽っていく。
黒羽は佐伯の腰を抱き寄せ、自由に動けないよう固定しつつさらにキスを深めていった。
キスがこんなにも気持ちがいいものであるなんて、夢にも思わなかった。お互いの唾液をかき混ぜて、歯列をなぞって、舌を絡め合って。
「……すき、バネさん……」
「俺も、……好きだ」
合間合間に愛を囁き合いながら、束の間の快楽に溺れる。
思いが通じた先、二人を待っていたのはあまりにも甘い空間だった。
end.
2013/3/6
御題:彼女の為に泣いた
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