■ I mean what I say.
一番側にいるのに、何故か心は遠く離れている。
心というか、どちらかというと本心だ。いつも薄い膜に本音を覆い隠して、愛想良く笑うのが俺は得意。
気付いてほしいけど、出来れば気付いてほしくない。
そんな矛盾した想いがくすぶって、揺れて、幸村の心をいつも挑発する。
「ん?どうした幸村、そんなに呆けて。珍しいな」
かけられた言葉でさえまったくといっていいほど頭に入ってこない。
それほどまでに、真田への想いは募り募って幸村を苦しめている。
もし、もしも幸村が女であったならこんな思いをしなくてもよいのに。何度もそう思って、有り得ない“もしも”に縋る。
合ってるとか間違ってるとか、正しいとか正しくないとか。そんなことはどうでもよくて、ただ自分の気持ちに素直になってしまう恐怖に、日々流されていく。
深い泥沼に片足から呑み込まれていく様な錯覚。あるはずのない可能性がじわじわと足先から伝わって、幸村を苛んでいく。
逃がさない、と宣告を受けて、抗う術も知らぬまま堕ちていく。負のループは今も尚幸村の中に在り続けるのだ。
思考は止まらない。想いは溢れて、止まらない。
度々指摘される。思考が飛ぶ時間が増える度に、想いは水増しして歯止めがきかなくなっていく。
自覚しているだけ、さらに質が悪い。
「好き」
何故その一言が言えない。
I mean what I say.
( 本気で言ってるんだよ )
心の中で、だけだけれど。
end.
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幸村はこんな片思いしてそうです。
全体的に薄暗くなりました……
2012/2/23
御題は空橙様より
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