■ あなたをひとりじめしたくて仕方がないのです

 あふれんばかりのチョコレートが紙袋いっぱいにつまっている。紙袋の数は五つ。一体全部でいくつもらったのだろうか。当然一人で食べきれる数ではない。

「真田はチョコレートもらった?」
「……いや、まだひとつももらっていないが……」
「俺のやつわけてあげよっか?」
「しかし、折角好意でいただいたのだから俺に渡してしまっては失礼だろう」

 そんな会話をしている横で柳と仁王が微かに苦笑した。

「真田も不憫じゃのう……」
「一番被害を被るのは女性陣だがな」
 二人の会話を偶然聞いていた赤也が首をひねった。
「えっ、それってどういうことっすか?」
 赤也が不思議そうに柳と仁王を見やる。そして仁王が声をひそめつつ赤也に耳打ちをした。
「真田のチョコはな、全部幸村がもっとるんよ」
「……?」
「真田にチョコレートをあげた女子はバレンタインデーの翌日に必ず休むんだ」
「一昨年に引き続き去年もひどかったのぅ……」
「真田にチョコ渡した女子ってのはつまりは幸村の敵じゃろ?本命であれ義理であれ幸村はゆるせんらしい」
「だから敵を真っ向から潰しにかかるんだ……そうして被害者は幸村により深い精神的ダメージを受ける、というわけだ」
「じゃあげた箱にこっそりいれるやつとかいなかったんすか?」
「ああ……下駄箱に入っていた分は真田がくる直前に幸村がすべて回収していった」
「………こわいっすね、」
「それだけ幸村は真田が好きなんじゃよ。恋人を誰にもとられとうない思うんはあたりまえじゃ」
「それにしても限度ってもんが……」
「なに赤也?なんかいった?」
「いっいえ!なな、なんもいってないっす!」
 幸村はにこにこと笑いながら手にしていたチョコレートを握り潰す。ひらひらと床に落ちた紙には真田せんぱいへ、と可愛らしい文字で書いてあった。
「ふ―ん……あ、みんなチョコいらない?こんなにたくさん持って帰れないし……」
「ありがたくいただこう」
「プリ」

 改めて幸村の恐ろしさを痛感した赤也はちゃっかり幸村のチョコレートをもらいつつ、全力で真田に好意を寄せる女子に同情するのだった。



end.
2013/2/14
御題:魔女のおはなし



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