■ そこにある愛を僕だけが知っていた

※赤→柳前提柳×仁



 参謀に悪戯がバレた。

 本当にほんの少しからかってやるだけのつもりだったのに、まさかあんなことになるなんて。

「おれ柳先輩のことずっと好きでッ!俺と付き合ってください…っ」

 仁王のペテンに見事ひっかかった赤也はあろうことか柳に変装した仁王に告白してきたのだ。
「……赤也、すまないが少しの間時間をくれないか?」
 とにかくこの場はなんとか誤魔化して柳に判断を仰ぐしかない。他の部員にも柳と付き合っていることは隠している。赤也がそれを知らなかったのも当たり前のことだ。こんなところで嫉妬心を燃やすのはお門違いである。
 この場をうまくやり過ごすことで事が丸くおさまるはずだったのだ。そう、柳さえ来なければ。
「仁王に赤也まで……こんな所で一体何をしているんだ?」
「……え、……?」
 本物が現れてしまえばもう誤魔化しようがない。仁王はあっさりと折れてペテンをといた。
「……ッひどいっす仁王先輩!俺のことからかうつもりだったんすか!?」
「誤解じゃ赤也、別にそんなつもりは…」
「言い訳なんて聞きたくないっす!」
 赤也の目尻にはみるみるまに涙がたまって、ついには泣き出してしまう。
「ちょっ…まちんしゃい赤也!」
 仁王の引き止める声にもかまわず、赤也は走り去ってしまった。

「……少々悪戯が過ぎたんじゃないか仁王?」
「まさか赤也がおまえさんに告白しにくるなんて思わなかったんじゃ」
「……不幸にも偶然が重なったとはいえ、赤也を傷付けたことにかわりはないだろう?」
「そっそんなこというてもッ参謀が好きなんは俺やろ……?」
 仁王が不安げに柳を見上げれば柳の手が仁王の頭を優しくなでる。
「そんな顔をするな、おまえのいうとおり俺が好きなのはおまえだ……雅治」
「赤也のことは悪いとおもっとるき……今から謝りにいくつもりじゃ」
「わざとでないのならそこまで咎めたりはしないさ。ほら……行ってこい」
「……な、参謀」
「なんだ?」
「キス、……して?」
「そんなに怖がらなくても、赤也に転んだりはしない」
「わかっとる、けど……」
「しようがない奴だな」

 苦笑しながらも唇を重ねてくる柳を力強く抱き締めて、仁王は赤也が走っていった廊下の向こうへと駆け出した。



end.
2013/2/13
御題:hmr



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