■ 紫煙の向こうに君をみた

 学校に似つかわぬ紫煙がゆらゆらと目の前で揺れていた。しかし屋上という場においてはある意味でそれは相応しい光景なのかもしれない。
「参謀、」
 中学生から喫煙なんてしていたら将来もう肺は真っ黒になっているだろう。何かと弊害が多いというのに柳は煙草をやめようとはしない。未成年の喫煙の危険について、という発表で教師陣にべた褒めされていたのはまだ記憶に新しいが、教師共がこの現状を目にした時一体どのような感想を抱くのだろうか。
「一本いるか?」
「……俺は遠慮しとくぜよ」
 悪いコトを真っ先に率先してやるのは絶対に仁王だと、誰かに言われたことがある。そんなイメージとは裏腹、仁王は見た目こそ奇抜だが生活態度としてはサボり癖以外はいたって普通だ。酒にも煙草にも手を出していないし、法に触れるようなことは何もしていない。
「いい加減、見つかっても知らんぜよ」
「俺は品行方正な生徒会役員だからおまえみたいに教師に目をつけられることもなければあらぬ嫌疑をかけられることもない」
「……ずるいのぅ…」
 正直煙草に興味がまったくないわけではない。しかしそこまでおちてしまえばそれこそ取り返しがつかなくなるような気がして。
「仁王、」
 ぐい、と柳に引き寄せられて唇を押し当てられる。唇を割って押し入る舌、口の中に広がるのは独特の苦味だ。

「ごちそうさま」

 間接的な背徳的余韻はそれだけで仁王を酔わせるには十分なのだ。



end.
2012/1/10
御題:たとえば僕が



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