■ それはお断りさせて いただきますね

「……なんだよその格好は」
「え、なにって。トナカイやんか」
「んなこと言われなくてもわかる。だから何で今そんな格好をしてるのかって聞いてんだ」
 跡部は全身トナカイ仕様の忍足をもう一度見て訝しげに眉を顰めた。
「似合とるやろ?」
「……まあな」
 胡散臭さといい気持ち悪さといい似合っているかどうかと聞かれれば確かに似合っている。
「ところでな、トナカイ侑士くんは景ちゃんにお願いがあんねんけど」
「大体の予想はつくがまあ言ってみろ」
「景ちゃんにサンタ…「断る」
「まだ全部言ってへんやん!」
「俺様がサンタ役なんてするわけねぇだろ」
「折角用意しとったのに…」
「おまえがなんと喚こうが俺はやらないからな」
「………」
 忍足はまだ諦めきれないようで、仕切りに跡部の方を見ては何かブツブツとこぼしている。
「こうなったら最終手段や!」
「最終手段?」
 そうや、といいつつ忍足はおもむろに懐から写真を一枚取り出す。
「……!」
 忍足が差し出したそれは跡部が以前ノリで着たセーラー服の写真。
「いつのまに撮ってやがったんだ…」
「俺の盗撮技術なめてもらったら困るわ」
 つまりはこれを拒否するならこの写真をバラまくということなのだろう。
 おそらく今忍足が手にしているあれを奪取したところでデータはとってあるはずだから徒労に終わるのは目に見えている。
「……サンタ役やるだけだからな」
「さっすが景ちゃん!」
 そうして忍足はがさがさと手に持っていた紙袋をあさりだす。

「ほなさっそくこれきて」

 しかし忍足が差し出してきたのは跡部の思い描いていたものではなく。
「どこからどうみても女物だよな、これ」
「ちょっとスカート短いだけやって」
「そういう問題じゃねぇよ!」
「まあ着る言うたからには着てもらうで」

 きらりと忍足の目が光り、気が付いた時にはすでに羽交い締めにされていた。



end.
2012/12/25(12/20)
御題は自惚れてんじゃねぇよ様より



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