■ 電池が消耗しています

 ぎゅう、と抱き締められて伝わってきた体温は、真田に確かな温度を感じさせる。
 真田はいつもの、慣れっこのことである幸村の行動を当然の如く無視をする。
 幸村の行動に意味付けをするのは非常に難しいと、そう真田は考えるのだ。
 我が儘で甘えたがりな幸村は構えば構うほど調子に乗るのであしらうことも大切だ、ということをようやく真田も学習して抱きつかれようがキスをせがまれようがけして相手をしようとはしなくなった。
 それが賢明な判断なのである。

「無視すんな真田―」

 真田をいじるのにも飽きたらしい幸村が真田の髪を思い切り引っ張る。

「阿呆、力任せに引っ張るな!」
「だって真田が相手してくれないんだもん」

 あまり放置しすぎてもいけないようで、幸村は真田の背中にへばりつくとそのまま動かなくなってしまった。

「幸村、」
「ん―?」
「何をしているんだ?」
「真田を充電してるの」
「俺を充電…?」
「そ、俺真田が足りなくなると死んじゃうから気を付けなよ」

 気を付けるも何も、何をすればいいというのだ。

「その充電とやらは一体いつになったら終わるんだ?」
「俺の気が済むまで」
「そんな身勝手な充電があってたまるか」
「真田が相手してくれたらすぐに満タンになりマス」
「………」

 幸村の思惑に乗せられまいとするが、このままひっついていられるのも面倒臭いし最終的な選択肢は一つに絞られる。

「……全く、おまえにはかなわんな」
「へへ、俺の勝ち―」

 誰も勝負しとらんわ、と小突いた後に思い切り抱き締め返してやった真田だった。


end.
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幸村に逆らえない真田くん。


2012/2/12
御題はHENCE様より

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