■ 白くとけこむ
ふたりぼっち

 きらきらのイルミネーション。いつもと同じはずの風景がずっと輝いて見える不思議な光景。
 街中はクリスマス一色で、幸村はそんな雰囲気の街が好きだった。華やかで美しい、電飾が彩る街は人口とはいえ自然では織り出せない幻想を作り出していた。

「ねぇ真田みて!」

 その中でも一際光を放つのは大広場に設置された巨大なクリスマスツリーだ。この地域ではそこそこ有名なそれを見るために幸村は真田と一緒にそこに訪れていた。
 カップルや親子連れで賑わう中、幸村は真田の手を握って人混みを縫って歩いていく。
「幸村、人の多い場所ではあまり…」
 真田は周りをちらりと一瞥してから繋いでいた手をやんわりと離した。幸村は不満げに頬をふくらませる。
「何か不味いことでもある?」
「同級生がいたりしたらどうするんだ」
「俺たちの関係を見せつけてやればいい」
 幸村は再び真田の手をとる。手袋ごしに伝わる体温はひどく冷たかった。
「……あまり人に見えないようもう少しこちらにこい」
 幸村とぴたりと肩がつくぐらいの距離で、真田は幸村の手に指を絡めた。
 ご満悦気味の幸村は真田の肩によりかかりながらツリーを見上げる。
「クリスマスツリーはね、みんな平等に照らしてくれるんだよ」
「……?」
「どんな形であれ、サンタさんは恋人たちには幸せをプレゼントしてくれる」
 別に具体的に形のあるものだけがプレゼントじゃない、目に見えない幸せが一番いいんだ、と。
「だからおまえの名には幸がはいっているのか?」
「そう。俺が真田に幸せをあげてるの」
 サンタの弟子になれるかも。幸村がそう言って笑うから、真田は思わず抱き締めそうになって。
「ちょっとぐらいいいでしょ」
 ツリーから少し離れた人目につかない暗がりで、小さくキスをかわしながら束の間の幸せに二人は沈んだ。



end.
2012/12/25(12/20)
御題は幸福様より



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