■ 2

 昔の恋人に会った。
 ブン太の知っていた彼は驚くぐらいに様変わりしていて、まるで別人になったかのような錯覚に陥ってしまいそうなぐらいで。
 それでも彼が仁王だとわかったのはやはり愛故なのだろうか。

「ね―丸井せんぱい、どうかしたんすか?顔色悪いですよ?」
「ん、あ―大丈夫。ちょっと考えゴトしてただけだから」

 今の恋人は赤也。仁王にふられて落ち込んでたとこを慰めてくれて、ようやく立ち直ったところで告白された。別れてすぐに付き合うなんてまるで仁王の代わりにしたみたいで、都合がよすぎるんじゃないかと言ったらそれでもいいと赤也は言ってくれた。
「俺は丸井先輩の側にいれるだけでいいんです。だから、」
 きっと丸井先輩を好きにしてみせるから、赤也のその言葉にブン太は首を縦に振った。
 仁王と付き合った年月と赤也と付き合った年月は、大体同じくらい。むしろ赤也の方が長いくらいだ。
 赤也の言葉通りにブン太は赤也のことが好きになって、もう仁王のことなんて過去の思い出になって。
 そう、思い出になっていたはずだったのだ。
 再会してしまった今、あの頃の未練がじわじわと溢れ出してきている。
 勿論赤也のことも好きだ。好きだけれど。
 ぐるぐると回る思考。四年も経ってまだ昔の恋人のことを引きずるなんて、そんなのみっともないことだってわかってるし。それでも思い返してしまうのはきっと仁王のことを未だに好きだからなのだろう。

 コンビニに再会した数日後。仁王から電話がきた。家に来ないかと誘われて、淡い期待を胸にブン太はそこに向かう。こんなのずるい。なんで俺に期待をさせるんだって。それでも誘いに乗ってしまったのはブン太の意思以外の何物でもない。

 殺風景な部屋で他愛のない話をして、お互いの近況を報告しあって。

「なぁ」
「なんじゃ?」
「俺のこと……すきか?」


 ごめんなブンちゃん。そう悲しそうに笑って、仁王はブン太の唇を奪った。
 何故かあふれてきた涙が頬を伝って、どうしようもない思いで頭が一杯になった。



end.
2012/12/9
御題はhmr様より



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