■ こんなに近くて
こんなに遠い
小指から一本の赤い糸がのびていた。
どこに続いているのかわからない、廊下の向こう側までのびているそれ。どうやら他の人には見えていないようで、引っ張ってもなんの感触もなかった。
今から部活に行かなければならないが少しぐらい寄り道をしても大して問題ではないだろう。こんなことを言っては真田に怒られてしまうだろうが、今は部活よりもこの赤い糸に繋がっている先の方が大事なことだった。
「一体どこまであるんじゃ……?」
赤い糸が途切れる気配は一向にない。仁王は赤い糸を辿って校舎内をぐるぐると徘徊していた。
これが物に繋がっているのか人に繋がっているのか、それさえもわからない。
結構な距離を歩いた。もうそろそろ赤い糸の先に辿り着いてもいい頃合いだと思うのだが…。
「……生徒会室……?」
赤い糸は生徒会室の中へとのびていた。会議中の札は外されているから中に入る分には構わないだろう。
手をかければ軋みをあげながら扉が開く。そっと中を覗き込めばそこには柳の姿があった。
「どうした仁王?今日は部活があるはずだが」
「ほぅ…そ―いうことかの、」
「ん?それはどういう……」
赤い糸の先は柳の小指に繋がっていた。まるで二人を縛るように、ぐるぐるとお互いの指に巻き付いていて。
「み―つけた」
end.
2012/12/4
御題はilta様より
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