■ 変わらないでとる君に

 高校も一緒に行くものだと、仁王は勝手に思っていた。
 柳生がテニスを辞めて、県外の有名私立高校に進学すると聞いて仁王は愕然とした。
 何も聞かされていなかった。そのまま立海系列の高校にあがって、大学まで一緒に行くつもりだった。
「なんで…なんで一言も言ってくれんかったん?なんで、こんな急に…っ」
「仁王くんに話せば、きっと決心が揺らいでしまうと思ったんですよ……だから、」
「……ッ!!」
 周りの人間が新しい環境に向かって仁王の知らない“誰か”になっていく。一人だけ今に取り残されたような、そんな感覚が思考を蝕んで。
「俺をおいていかんで…っなあッ!」
「永遠のお別れというわけではないんですよ?だから…そんな顔しないでください」
 いつの間にか溢れていた涙が頬を伝って、仁王の顔を濡らす。
「いやじゃ…俺はずっと柳生と一緒に…」
「………仁王くん……」
 仁王が駄々をこねることで柳生を困らせてしまうということは重々承知していた。それでも心が柳生と別れるという事実についていけない。仕方がない、と納得しようとする自分と、諦めきれなくて足掻いている自分。
「柳生…柳生…いかんで……」
 柳生の手が仁王の頭を優しく撫でて、そうして離れていく。
「仁王くん…顔をあげてください」
 仁王はしきりに嗚咽をあげながら涙でぐちゃぐちゃになった顔をあげる。
 柳生はわずかに顔を歪めて、無理矢理作った笑顔で微笑んだ。
「私だって、仁王くんとずっと一緒にいたかった」
 唇に触れた唇は冷たくて、熱を帯びた舌を絡めてお互いを求める。
「ん…っぅ、」
「ねぇ仁王くん、約束しませんか…?」
「……やくそく?」
「私たちが二十歳になったとき。その時に一緒になりましょう?同棲しましょう」
「……うん」
「だからそれまではちょっとだけお別れです。今よりずっといい男になってみせますから、待っていてくださいませんか……?」
「……やくそくやぶったらゆるさんから」
「はい」
「俺だって柳生がびっくりするぐらい男前なって、キスもセックスも上手くなっちゃるから」
「浮気は駄目ですからね」
「ちょっとぐらいはええじゃろ……心配せんでも、いちばんは柳生じゃき」
「ならいいですが…ほどほどにしてくださいよ」

 ようやく落ち着いた仁王に柳生は再び口付けをおとすと、今度は柔らかく微笑む。
「大好きですよ、仁王くん」
「……俺だってすきじゃよ」
 ぎゅう、と柳生を抱き締めて、仁王はしばらくの間甘い余韻に浸っていた。



end.
2012/11/25
御題はたとえば僕が様より



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