■ お口しに甘いものを

 生徒会の仕事で少し遅れて部室へやって来た柳はブン太を視界におさめた途端に思わず肩をすくめてしまった。
 ブン太はミーティング用の机に自前のお菓子を広げ黙々と食べていた、と思われる。何故推量形なのかというと今目の前いるブン太は机にうつ伏せてすやすやと寝息を立てているからである。
 状況証拠により柳の予想が外れている可能性は限りなく0パーセントに近い。さらには口の端にチョコレートもついているから言い逃れが出来ないのは明白だ。
 風紀委員会の会合で真田はもうしばらく来ないだろうが、この状況を見られてしまえば確実にお灸を据えられるのは目に見えている。

「丸井、起きろ」
 軽く肩を揺さぶって起床を促せばブン太はわずかにうめいて、瞼がほんの少し動く。
「れんじ……?」
「……学校では名前を呼ぶな、ここは部室だ」
「ぶしつ…?」
 そこでようやくブン太の意識が覚醒してきたらしい。
「うそ…いまなんじ?」
「とっくに部活は始まっている。……とにかく、弦一郎がくる前にこれを片付けてしまった方がいい」
 机の上のお菓子の山を手際良く片付けながら柳は言った。
「ありがと…」
「こら、自分で食べたものくらい少しは自分で片付けろ」
「蓮二がやってくれるだろぃ」
「だから名前で呼ぶのは…」
「今部室に誰もいねぇんだからいいだろ―」
 ブン太はぐっと背伸びをひとつして、そのまま柳の腰に抱き付いた。
 故意であれ無意識であれ、本当にブン太はたちが悪い。そんな可愛らしい事をされたら怒るに怒れなくなるにきまっているではないか。
「……本当におまえは仕様がないな…ブン太」
 ふにゃりとブン太が笑みをこぼせば、柳はくしゃりとブン太の頭を撫ぜた。
「蓮二、キスして」
「誰か来ても知らないぞ?」
「べつに…いい」

 チョコレート味のキスを堪能しながら、柳はどこまでもブン太に甘くしてしまう自分はきっと根っこまでどろどろに毒されているのだろうと、そう思った。



end.
余代様リク、柳ブン/甘甘でした!
ブン太のわがままなら大概なんでもきいてあげる柳、というイメージで書かせていただいたのですが……いかがでしたでしょうか。
今までに書いたことないCPでしたのでこんな具合でいいものかと不安も残りますが…右も左もわからないのがマイナーCPの醍醐味でもありますが(笑)

それでは余代様、リクエストありがとうございました!
2012/11/21
御題はAコース様より



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