■ 想うだけじゃもう足りない

※教師×生徒パロ


 廊下を横切ろうとしたら大好きな先生の背中が見えたから幸村は後ろから思い切り躊躇なく抱きつきにかかった。
 前のめりになった先生は一瞬うめき声のような声をあげて、すぐに肩越しに幸村の方を振り返る。
「真田先生、今からどこかいくの?」
「職員室に資料を取りに行く途中だが…」
「じゃあ俺、手伝ってあげるよ」
 有無を言わせずに先生の後ろをひょこひょことついていくとよくもまあこんな量を一人で持っていこうなんて考えてたな、と思わず溜め息を吐き出してしまいそうなくらい大量の資料の山がどっさりとデスクに積んであった。
 幸村は紙の束が鼻にくっつきそうなぐらいまで両手に抱えて、おそるおそる一歩を踏み出す。
「あまり無理はするなよ?」
「だいじょうぶ!」
 幸村よりも量が多いはずの先生は器用にそれらを抱えて先にすたすたと行ってしまう。先生の薄情者!と頬を膨らませながら幸村は慎重かつ迅速に資料を運ぶ。
 とうとう先生の姿が見えなくなって、そういえばどこに持っていくか聞いてなかったな、と今さらすぎることに気付いて階段の踊場で幸村が立ち往生していると階段の上から先生がとんとんと降りてきた。
「ほら、半分かせ。俺がもってやるから」
「……ありがと、せんせ」

 こうやって幸村のわがままに付き合ってくれる先生のことが幸村は好きだった。なんだかんだで構ってくれるし、他のみんなに見せない一面を幸村にだけは見せてくれる。
 資料をすべて教室に運び終えて幸村はふう、と溜め息をついた。
「ねぇ先生、俺頑張ったからひとつだけお願いきいてよ」
「なんだ?」
「俺がいいっていうまで目とじて」
「…?別にかまわんが」
 目を閉じる先生を前にして、幸村の心拍数はあがっていくばかりで。
「俺、先生のことが……」
 好き。そう言って幸村は先生の唇に自分のそれを重ねた。
 驚きに目をまん丸にする先生の顔は思いの外間抜けで、幸村はくすくすと笑いながら額にもう一度キスを落とした。



end.
2012/11/16
御題はたとえば僕が様より



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