■ お菓子の甘さに溶け込んだ
「真田、あ―ん」
「?」
目の前にさしだされたチョコレート菓子を見つめながら真田が首をひねる。
「ポッキーゲームしよ」
きょとんとした真田の表情から察するに真田はポッキーゲームがなんたるかを知らないのだろう。
「今から俺と真田でポッキーを両端から食べていって、ポッキーを折った方が負け。簡単でしょ?」
「ようは折らずに食べればよいのだな?」
「うん」
再び幸村が真田の口元にポッキーをもっていけば真田はさきっぽの方を軽くくわえた。親切のつもりでチョコレートの側を真田に譲ったが手が汚れるのが嫌だった、というのが正直なところだった。
そうして幸村は真田と視線を合わせたままさくさくとポッキーを短くしていく。
「!」
そこで真田ははっとした顔をした。
このままどちらとも折らなければそのまま唇が合わさるわけで。
きっと真田のことだからその事実に気付いていなかったのだろう。それぐらいは容易に想像ができた。
折るかな、と幸村は思ったのだが真田が折る気配はなかった。
幸村自身別段このままキスしても構わないと思っていた。一応部室には誰もいない。
そうしてあと数センチのところでポッキーを間食しようとしたときだ、真田が残りの幸村の分を一気に食べた。
「あっ」
思わぬ真田の行動に幸村は若干狼狽えるが唇が重なった今となってはもはやそんなことはどうでもよくて。
「……美味しい?」
「チョコレートの味がするな」
「お互い同じやつ食べてたんだからあたりまえでしょ」
唇のはしについたチョコレートをぺろりとなめて、幸村は真田にもう一度チョコレート味のキスを真田にプレゼントした。
end.
2012/11/11
御題はHENCE様より
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