■ 群青に泣くだけの純情

 小学生時代、幸村は酷く涙もろかった。

「うわあぁぁぁんさなだあぁぁぁっ!!」

 小学生特有の甲高い声で耳元で叫ばれて、真田は思わず耳を塞いだ。
「一体どうしたんだ幸村、順を追って説明しろ」
 しばらくわんわんと喚いていた幸村であったが、涙を拭いつつ嗚咽をあげながらゆっくりと状況を説明していった。

 幸村の話を要約すると同じテニススクールの中学生に絡まれ散々暴言を吐かれた挙げ句愛用のラケットに唾を吐きかけられた、とのことだった。
 話を聞いた真田自身、今すぐにでも殴りに行きたい衝動にかられていた。

「うむ、それはけしからんな」
「でしょ!それでね、俺ついきれちゃって相手の中学生の腕折っちゃって……」
「……え?」

 さっきまで泣いていたはずの幸村はけろっとした顔で指をぱきぱきと鳴らしてみせた。

「すぐに逃げちゃったから名前とか学年とか全然わかんなくって、俺すごいくやしくて…っ」
「しかし相手にケガを負わせたのは不味いのではないか?」
「目には目を、歯には歯だよ」

 いささかその度合いを越えている気がしないでもなかったが今の幸村を怒らすのもこわかったのもあってあえて真田は口には出さなかった。



end.
2012/10/20
御題は幸福様より



[ prev / next ]

67/303
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -