■ はんぶんこはあまり好きじゃない
「幸村、蓮二に菓子をもらったからこれを二人で分けよう」
真田が差し出したお饅頭は見るからに美味しそうで、幸村は思わずごくりと唾を飲み込む。昼から何も食べていなかったこともあって幸村のお腹はぺこぺこだった。
「はんぶんこはやだ」
「……いやか?」
「三分の二ちょうだい」
「……三分の二?」
「そ、三分の二」
幸村は饅頭を器用に三等分すると、その内のひとかけらを真田に差し出した。
「なんで三分の二がいいんだ?」
「真田の俺への愛情を確かめるためだよ」
「これで愛情度合いがわかるのか?」
「どれだけ真田が俺に甘いのかっていうのがよ―くわかる」
だって普通なら怒ってしかるべき場面だし。と幸村はご満悦気味に饅頭を頬張った。
「そんなに俺は甘いのか?」
「甘いよ、このお饅頭よりずっとね」
でもこんな風に甘やかされるのが俺は好きだからさ、と。
綺麗に完食して口端についた食べかすをぺろりとなめとると幸村はそう言ってはにかんだ。
「全部要求しないところがおまえらしいな」
「ふふ、そうでしょ」
end.
2012/10/16
御題は魔女のおはなし様より
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