■ 冷たいキスのしかた
柳の唇は冷たい。ひんやりとしたその感触が好きで、仁王は何度も柳の薄い唇に口付ける。
「ん…、ッぁ」
息をする暇もないくらいに、深く、深く。お互いに酸素を奪い合う。その行為に、ひどく興奮する。
いっそのこと、確かな温度をはらんだ仁王の唇で柳のそれを溶かしてしまえたなら。
「あたたかいな、おまえの唇は」
「……参謀が冷たいだけじゃよ」
まるで心と反比例するみたいなその温度に、自分の唇の温度が憎らしくなる。
「もうちょっとだけ、こうしといて」
冷たいのは唇だけ。ほんのりと熱を帯びた頬は朱に染まり、心臓はどくどくと早鐘を刻んでいる。
「できることなら二度と離したくない」
「物理的には無理でも、俺を繋いでおけるんは柳だけやよ」
「……あたりまえだ」
噛み付くようなキスを何度か繰り返した後、口先から溶け出してしまうような甘い甘いキスをおくられた。
「このまま参謀と一緒に溶けてしまえたらええのに」
ずっと一緒にいたい、なんて。
そんな我が儘さえ叶わない。
end.
2012/10/13
御題はたとえば僕が様より
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