■ 初恋は夢のなか
※悲恋
好きなひとができました。うまれてはじめて、できました。
でもそのひとは俺の友だちのことが好きで、俺はそのことを知ってもなおこの思いをすてることなんてできないのです。
初恋は実らないとよくいいますが、きっとこれはかなわない恋です。
だからというわけではありませんが、ほんのすこしのふたりきりの時間のあいだだけ。そのときには笑顔のひとつぐらいはひとりじめさせてください。
「あんな、ブンちゃん。俺、柳生のことがすきなんかもしれん…」
仁王が比呂士のことが好きだってことぐらいわざわざいわなくたって最初っからわかってた。だってずっとみていたから。
「……告白とかしねぇの?」
「こくはく?」
「すきならすきって告白ってするもんじゃねぇの?」
きょとんとした仁王の顔。馬鹿な俺の口はとまらない。
「告白しないで後悔するよりはあたってくだけた方がよっぽどましだろぃ。もしかしたら…って展開もなきにしもあらずだし」
仁王のことが好きだから、仁王が俺をすきじゃなくても仁王がそれで幸せだっていうなら。
「……やっぱりブンちゃんに話してよかったき。いっつも俺にいちばんいい答えをくれるんはブンちゃんやから」
ありがとな、そう言って仁王は柳生の教室へと走り去った。
ばか、
俺はあふれる涙をとめるすべなんてしらなくて。
end.
2012/10/8
御題はHENCE様より
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