■ でたらめな好きの仕方
「日吉、」
名前を呼ばれて肩越しに振り返ると、何故か口元に緩く弧を描いた跡部がこちらに向けて小さく手をこまねいていた。
「……なんですか」
「いいからこっちこい」
露骨に嫌な顔をしないように注意して日吉はめんどくさいオーラを漂わせながらも跡部のいうとおりにする。
「ほら、これやるよ」
「……」
跡部に手渡されたのは個別包装された飴玉で、パッケージには可愛らしいデザインのお化けが描かれていた。ほんの一瞬内心でときめいてしまったが飴玉を貰うなり日吉は反射的にまた減らず口をたたいてしまう。
「俺のことを子供扱いするのはやめていただけませんか。俺が飴玉ひとつで喜ぶとでも思ったんですか」
「まあそんなこと言わずに大人しく受け取っておけ日吉」
「別に、折角いただいたのでいただきますが」
日吉は飴玉をポケットの中に入れるとそのまますたすたと戻っていく。
「日吉めっちゃ喜んどったやん」
「あれでか?」
「ひよはツンデレやからあれで精一杯の喜びをあらわしとんのや。実際さっきちゃんと飴ちゃんたべとったしな」
「わかりにくい野郎だな……」
「ひよはツンデレの典型やからな、基本的に言ってることの反対を思っとるから」
忍足は日吉が飴玉の包み紙を丁寧にたたんでしまうまでもきっちりと確認して、こっそりと一人で笑っていた。
end.
2012/10/4
御題は魔女のおはなし様より
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