■ その一、君の唇を独り占めすること
※忍足がヤンデレ気味
跡部の唇は忍足のものだと、はっきりと取り決めをしたわけでもないのに忍足は勝手にそう思っている。
他の誰かに奪われるなんてことが赦せるわけがないし、跡部の唇の温度も感触もすべては忍足のものだ。人一倍独占欲が強いとかそういうわけではないけれど、跡部のことになると忍足はいつになくむきになってしまう。顔にこそ出さないが忍足は常に嫉妬心を抱いているし、できることならばずっと跡部の側にいたい。そんな気持ちを恋人にいだくその行為自体は普通なんだろうけれど、忍足は独占欲の他にさらに束縛したいという欲求が強く度々跡部を困らせている。束縛、つまりは単純に身動きを封じることにある種の快感を見出すのだ。
「景ちゃん、」
部屋の扉がぎしりと悲鳴をあげて、忍足がベッドの方へ視線を向ければ両手足を縄で縛られご丁寧に猿轡まで噛まされた跡部が小さく体を丸めてそこに横たわっていた。
「ちゃんとええ子にしとった?」
忍足の声に気付いたらしい跡部は一瞬怯えた表情を見せたが次の瞬間にはきっと忍足の方をにらみつけていた。
そっと猿轡をはずしてやると口端から唾液が伝って、なんだか艶めかしい。忍足は跡部のこの表情が一番好きだ。
「この野郎ッはずしやがれ…っ…!」
「はいわかりました、なんて言うとでも思ってるん?」
あんまり生意気いうてたら今度は目隠しやで?と忍足がこぼせば跡部の瞳が再び揺らいだ。
景ちゃんは俺には逆らわれへんのやから、おとなしくいうこときいてればええんや。
「景ちゃんの唇は俺のもんやから、」
(誰にも触れさせはしない)
end.
2012/10/3
御題は魔女のおはなし様より
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