■ 甘くなくてもいいんだけれど

 こんもりと膨らんだ布団から小さくくぐもった声が漏れる。
 時刻は午前十一時半。日はとっくに昇りきって、既に昼に差し掛かろうとしていた。

「こら、幸村。いい加減起きろ」

 呆れた声で真田が大きく溜め息を吐き出す。
 いくら休日とはいえだらけすぎである。声をかけても起きる気配のない幸村に痺れをきらした真田は布団を剥がすべく掛け布団に手をかけた。

「い―や―だ―っ」
「阿呆、寝過ぎだ」

 力ずくで布団を剥がそうとするが幸村は全力で抵抗をはかり真田の思うようにはいかない。

「離せ、」
「嫌だ!もうちょっと寝る!」
「我が儘ばかりいうな、怠惰な生活習慣が身についたらどうするんだ」
「たまにはいいだろ、朝寝坊できる日なんてぜんぜんないんだからさ―…」

 頑固として布団を死守しようとする幸村があ、そうだ、と何かを思い付いたように布団の隙間から顔を出した。

「おはようのキスしてくれたらおきてもいいよ」
「……今度は一体何を言い出すかと思えば…」
「どうせ真田はヘタレだからできないでしょ?というわけでおやすみ、俺は今から惰眠をむさぼるから!」
「………」

 その瞬間の真田の動きは思わず目をみはるほどにはやかった。

 真田は幸村の唇に自身の唇を押しあてたかと思いきやさらには舌までいれてきて。
 もちろん幸村の頭の中はパニック状態で、必死に布団をつかんでいた腕からは見事に力が抜けてあっというまにはがされてしまった。


「キスしたらおきるんだろう?」


 そのままベッドからひきずりおろされ、幸村は少し遅い朝を迎えた。



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2012/9/24
御題は自惚れてんじゃねぇよ様より


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