■ 噛み合わない歯車

 あっちみてみんしゃい、と仁王がフェンスを指差したのに柳は何故か逆方向、つまりは仁王の方を見つめてきた。

「なんか顔ついとる?」
「いや、そんなことはない」

 フェンスの上で戯れていた鳥たちはいつのまにか姿を消し、仁王はつまらなさそうに溜め息を吐き出した。

「せっかくかわいいのがおったのに、もったいないのぅ」
「俺はずっとおまえを見つめている方がよっぽど有意義だ」
「ふ―ん…へんなの」

 仁王は屋上の冷たいコンクリートに体をぴたりとつけて、改めて柳を見上げる。


 微睡む思考の中で仁王は時折、柳の見ている世界と仁王の見ている世界はもしかしたら百八十度違うのではないかと錯覚してしまう。
 仁王が美しいと感じるものも、滑稽と感じるものも、すべて逆さまに見えているんじゃないかと。それほどまでに仁王と柳はちぐはぐだ。

「なぁさんぼう」
「ん、なんだ?」
「おれんこと、すき?」
「勿論好きだが……それがどうした?」
「俺も参謀が好きじゃ」
「それぐらい言われなくとも知っている」


 お互い好きだってことだけは一緒。それだけで十分なのかもしれないと。

 優しく髪をなでられて、仁王は浅い眠りにおちた。



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2012/9/21
御題は邂逅と輪廻様より

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