■ 君は春に似ている
「幸村くんは春に似ているね」
「春?…って季節の春?」
「そう、その春」
季節は今ようやく夏を終えて、秋へと足を踏み出そうとしている。
半袖で少し肌寒さを感じるぐらいのそんな気温が幸村のお気に入りで、まさか不二に春みたいだなんて言われるとは思っていなかった。
「春という季節は知らないところで出逢いや、あるいは別れを用意してくれるんだ。それを僕たちは喜びや悲しみを抱きながら受け止めていく、春はそんな季節だと思うんだよ」
「で、それが俺だって?」
幸村は思わず目をぱちくりとさせて、次の瞬間には小さく笑いだしていた。
「前から思ってたけど、不二って突拍子もなく不思議なこというよね」
「よくいわれるよ」
「俺はそんな風に考えたことなかったからさ。春でイメージするものといえばたくさんの草花や生き物で、やつらが目を覚まして賑やかになる季節だって俺は思ってたから。俺は春、好きだよ?」
「僕も別にきらいってわけではないよ、ただいい面ばかりではないってこと」
そうして不二はおもむろに幸村の首に腕を回すと、不意打ちでキスをおとした。
「秋は移り気な季節」
きをつけなくちゃね、
そう言って不二は秋になった。
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2012/9/21
御題はilta様より
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