■ 君が隠した悲鳴を聴いた
部室の扉を開けた瞬間にぶらりと目の前に人影がうつる。
人の足だ、天井からぶら下がる人の足。背中を伝う冷や汗。だめだだめだと脳が警鐘を鳴らすのに視線はゆっくりと上にあがる。
虚ろな瞳の自分と目が合う。口元にうっすらと笑みをたたえながら、幸村は首を吊ってじっとこちらを見つめていた。
『しんじゃったよ、俺』
なぁ、これがおまえの、幸村精市の運命だよ。
わずかに生気を宿らせた瞳で、“俺は”嗤う。
「うわぁあぁぁぁッ!!」
突如響いた幸村の悲鳴に真田と柳が血相を変えて部室へかけこむ。
入り口付近でうずくまり泣き叫ぶ幸村を二人がかりで押さえ込み、そして抱き締めた。
「幸村、ッ……幸村!!」
とまらない叫びと嗚咽は途切れることなく、二人の鼓膜をふるわせつづける。
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2012/9/19
御題はilta様より
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