■ 大嫌いだなんて往生際の悪い

 手を繋ぐなんて女々しいことで幸せを感じてしまうぐらいに、跡部は忍足しか見えていない、と忍足は自身で勝手に思っている。
 跡部は口にこそださないが相当忍足に溺れているはずだ。平静を装いつつも内心では忍足の虜で…―

「あほ侑士、心の声がもれてやがるぞ」
「え、うそん?ほんま?」

 しまった、と忍足は口元を押さえたが別に聞かれて困る内容でもなかったな、と思い直しこちらを軽く睨み付けてくる跡部に微笑みかけた。

「それ以上こっぱずかしい妄想垂れ流したら容赦なくなぐるぞ」
「そんな恥ずかしがらんと景ちゃん、たまには自分に素直になるんも大事やで?」
「忍足の分際で俺様に指図してんじゃねぇよ」
「そうやって意地はるから素直に甘えられへんのやって、」
「おまえに甘えたりしね―って」
「うそついたらあかんで、今やって甘えたいくせに」
「何をどういう根拠をもってそんなふざけた結論に至るんだよ」
「だって普段景ちゃん俺がこんなこと言うても絶対無視すんもん」
「たまたま暇だから相手してやってるだけだよ」
「それだけやないんちゃう?」
「あ―も―ごちゃごちゃうるせぇな!珍しくこの俺様が相手してやろうと思ったがやっぱりやめだ、おまえが調子に乗るだけだしな」

 跡部はそう言うなり椅子から立ち上がり、つかつかと忍足に近付く。

「最初からそうしとけばええねんって」
「だまれ」

 おまえなんてだいきらいだ、と呟く跡部に忍足はとりあえずおおきに、と返しておいた。


 だって景ちゃんが俺に向ける嫌いって言葉は、つまりは好きってことやから。



-----
2012/9/19
御題は自惚れてんじゃねぇよ様より


[ prev / next ]

251/303
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -