■ 触れては感じる、やわらかな愛しさ

※幸村に子供がいます。



「あ、真田副部長!」

 後ろから聞き覚えのある声がして、真田が肩越しに振り返れば中学時代からの後輩がぶんぶんと真田に向かって手を振っていた。
「久し振りだな赤也、元気にやっていたか?」
「真田副部長こそ!確か有名所に入社したってききましたけど…」
「ああ、おまえは今年卒業だろう?ちゃんと卒業できそうか?」
「もちろんですよ!ちゃんと卒論だってマジメにやってるんですよ、俺」

 高校を卒業して以来一度も会っていなかったから四年ぶりになるのか、赤也は身長こそのびたが中身はまだ子供じみていたので少々心配していたが…この様子をみる分にはちゃんとやっていっているようだ。

「副部長は一人で買い物っすか?」
「いや、今日は家内と一緒だ」
「家内って、奥さんいるんすか!?」
「もうこの歳だ、結婚していても不思議ではないだろう?」
「そ、そうっすけど…」

 赤也は未だに信じられないのか落ち着かない様子で真田をちらちら見つめる。

「真田副部長の奥さんってもしかして…」
「あ、パパ!ごめん遅れた―…ってあれ、赤也じゃん。うわ、すっごい久し振り!」
「やっぱ幸村さんでしたか…ってえ、ちょっ、ええぇぇっ!?」
「こら赤也、あまり大きな声を出すな」
「かわいいだろ?譲っていうんだ」

 幸村の腕の中には生後間もないであろう赤ちゃんが抱かれており、今はすやすやと眠っている。
 真田が幸村と結婚していてさらには子供までもうけていた事実に赤也は驚きを隠せず、何度も目をぱちぱちとしばたかせていた。

「まあまたみんなで集まる機会もあるだろうから、その時にいろいろ話してあげるよ」
「話したい、の間違いだろう?」
「そんなことないって!」

 それじゃあね、と手を振る幸村と真田を呆然と見送りしばらく赤也はその場から動けなかった。



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2012/9/16
御題は魔女のおはなし様より


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