■ これは恋なんかじゃない

※(幸+仁)×ブン



「バレてないとでも思った?」

 心臓が今にも飛び出しそうなくらいどくどくいってる。
 ブン太を見つめる幸村の目はどこまでも冷たくて、まるで熱を帯びていない。

「仁王に誑(たぶら)かされたんだろ?」
「違う…あれは、ちがう」
「何がどう違うの?俺に教えて?」
「俺はあいつが好きなんじゃない…!」
「じゃあなんで抱かれたの?俺に隠れてさ」

 脅されているから、なんて口が裂けても言えなかった。もし仁王のことを話したら幸村を痛めつける、なんて言われたら何も言えなくなるに決まってる。

「幸村くんにはどうしてもいえない」
「だめ、いって」
「でも……」
「俺はどうなってもいい、俺がいくらでも傷付いてあげるから……だから、ブン太が全部背負わなくていいんだよ」
「…ッ……」


 ブン太は堪えきれずに幸村に抱き付き、事のすべてを吐き出した。

 仁王に無理矢理抱かれたこと、幸村にそのことを言えば幸村を痛めつけると言われたこと、脅されてそれから何度も抱かれていること。


 幸村は黙ってすべてを聞いてくれた。そしてブン太の背にまわされた腕が何度も頭を撫でてくれた。

「だからおれ…ッ仁王のことが好きなわけじゃない…っ」
「大丈夫、それぐらいわかってるよ」

 幸村の胸の中で泣きじゃくるブン太とは裏腹、ブン太に見えないことをいいことに幸村の口は緩い弧を描いていた。





「もしもし仁王?無理言ってごめんね」
『別にかまわんよ、俺も楽しませてもろうたし』

 やっぱ幸村は性格わるいのう、そう呟くようにいう仁王に幸村は明るい調子で返した。

「精神的に弱りきってるときはすぐに快楽に従順になるから、」

 さっそく今晩にでもね、そう言って幸村は一方的に通話を切った。




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2012/9/5
御題は魔女のおはなし様より


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