■ 罪の味
嘘つきなんじゃない、騙すんだ
(嘘つき)(嘘吐き)(うそつき)
(ウソツキ)
幾度となく仁王に吐かれたセリフ。
おまえは嘘吐きだ、と。
「嘘はいけないな……仁王」
びくりと、背中が震えた。
「参謀も……俺んこと嘘吐きていうん?」
昔から嘘吐きというレッテルをはられていた。仁王は嘘を吐くんじゃない。嘘を『利用して』相手を騙すのだ。
だから嘘吐きなんて評価は仁王に似つかわしくない。仁王は立派な詐欺師なのだ。
幼い頃から胸の奥の方に沈殿する小さなコンプレックス。うそつき、まさはるくんはうそつきだから。
「何を言っている、おまえは嘘を吐くのではなく嘘で他人を騙すんだろう?」
それがおまえではないのか?
「……まったく、その通りじゃよ、」
柳だけは仁王のすべてを知っている。飄々とした表情の裏側も、寂しさに埋没しそうな弱い一面も、すべて。
「……柳、俺んこと、見捨てんとってな」
「可愛い恋人をこの俺が見捨てるわけがないだろう?」
何故があふれてきた涙をひとすくいして、柳は仁王の口元にそれをもっていく。
舌に触れたそれは酷く甘い。
「これがおまえの罪の味だ」
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2012/9/4
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