■ 罪の味

嘘つきなんじゃない、騙すんだ

(嘘つき)(嘘吐き)(うそつき)

(ウソツキ)


 幾度となく仁王に吐かれたセリフ。
 おまえは嘘吐きだ、と。




「嘘はいけないな……仁王」

 びくりと、背中が震えた。

「参謀も……俺んこと嘘吐きていうん?」



 昔から嘘吐きというレッテルをはられていた。仁王は嘘を吐くんじゃない。嘘を『利用して』相手を騙すのだ。
 だから嘘吐きなんて評価は仁王に似つかわしくない。仁王は立派な詐欺師なのだ。

 幼い頃から胸の奥の方に沈殿する小さなコンプレックス。うそつき、まさはるくんはうそつきだから。



「何を言っている、おまえは嘘を吐くのではなく嘘で他人を騙すんだろう?」

 それがおまえではないのか?

「……まったく、その通りじゃよ、」

 柳だけは仁王のすべてを知っている。飄々とした表情の裏側も、寂しさに埋没しそうな弱い一面も、すべて。

「……柳、俺んこと、見捨てんとってな」
「可愛い恋人をこの俺が見捨てるわけがないだろう?」

 何故があふれてきた涙をひとすくいして、柳は仁王の口元にそれをもっていく。
 舌に触れたそれは酷く甘い。


「これがおまえの罪の味だ」




-----
2012/9/4


[ prev / next ]

118/303
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -