■ 愛よりも不確かな繋がり

 嫌だとかやめろとか、そんな言葉は奴には聞こえていないらしい。
 散々体を高ぶらされて、もうそれでいっぱいいっぱいだというのに。

「や…ッも、頼むから!なんでもするからそれだけは……っ」

 身動きをとる余裕もない。後ろから直接感じる熱はじりじりとブン太の体を追い詰める。
 我慢とか、そんな次元でないほどにじらされて挙げ句の果てには両手をいましめられて。

「私、人の嫌がることをするのが一番好きなんですよ」

 押し倒したされた時の衝撃でポケットから転がり落ちたブン太の携帯を片手に、通話履歴から木手は仁王の番号を呼び出す。

「恋人に電話させてあげるんですから、勿論嬉しいですよね?」
「いゃ…だ、やめてくれよ…っ…!」

 無情にも響くコール音。でるなでるな。お願いだからでないでくれと。

『もしもし…ってかどうしたんブンちゃん』
「なんか…んッ、さみしくなったからさ、声、聞きたいな―って…」
「ブンちゃんが素直に甘えてくるなんて珍しいのう」

 木手が与えてくる微弱な快楽に体を震わせながら、ブン太は必死に堪える。

「なんかブンちゃん…風邪?声かすれちょらん?」
「気のせい…っぁ、だろぃ」
「やっぱなんかおかしいき。無理せんで、今日ははよ寝た方がええ」


 もう声を抑えるのも限界だ。
 木手に電話を切るように目で訴えると、何を思ったのか木手は通話を切ることなく受話器ごしに小さく呟いた。


「貴方の恋人、少しおかりしますよ」


 そのまま木手は通話を切り、唖然とするブン太に向かって冷たく笑った。


 机の上で何度も鳴る携帯のバイブ音も、ブン太の喘ぎにかき消され―…



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2012/9/1
御題はポケットに拳銃様より


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