■ 目が眩むような衝動

※跡部女体化
※三年生にあがる直前ぐらい


 跡部が髪をばっさりと切って登校した日、校内は騒然とした。

 腰あたりまでのびた自慢の髪を、肩上までばっさりと。どういう心境の変化かは謎だが、とにかく衝撃の事件だった。

「けっ景ちゃん!?なんであんな綺麗な髪きってもうたん!!」

 恋人の忍足も衝撃をもろに受けた人物の一人で、なかば半泣きになりながら跡部の肩をつかんだ。

「いい加減うっとおしくなってきてたんだよ。部活でも邪魔になるし……」
「そんな…俺景ちゃんの髪お気に入りやったのに…」

 未だ納得がいかないらしい忍足は跡部のことを抱きしめながら文句とも愚痴ともつかぬことをぶつぶつと呟く。

「おまえがそんなこというだろうと思って、切った髪を保管させてあるから。おまえが今度俺の家にきたときに渡してやるよ」
「ほっほんまに!?」

 きらきらと目を輝かせる忍足に跡部はほんの少しだけ微笑む。

 鬱陶しかった、というのも理由のひとつだが、部長になる自分へのけじめをつけるという意味でも髪を切っておきたかった。
 氷帝の頂点に立つ者として、己自身を律しておきたかったのだ。


 薄々感づいているであろう忍足はあえて何も言ってこなかったが、それはそれで奴の優しさだと思って跡部は切り立ての自分の髪を指先でなでつけるのだった。



-----
2012/8/28
御題は誰花様より


[ prev / next ]

248/303
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -