■ キスより甘いプレゼント

※社会人設定で真田と幸村が同棲してます。
※妊娠ネタですので苦手な方はご注意くださいませ。



「あかちゃん、できたかもしれない」

 ぽつりとそうこぼせば、柳が驚いた顔で幸村を見つめた。
「……いつから気付いていたんだ?」
「一週間前に、検査したら…」
 そっと腹部を撫でながら、幸村が小さく微笑む。
「とにかく、弦一郎に報告しなければいけないな。勿論まだなのだろう?」
「うん…どう伝えたらいいのか、正直迷ってる」
「あまりにストレートに伝えると弦一郎は混乱してしまうだろうからな……幸村は自分の言葉で打ち明けるつもりなのか?」
「もちろんそうなんだけど、前振りというか……心の準備ぐらいさせてあげた方がいいかな―って」

 柳と話し合った結果、一応の段取りを決めて幸村は柳と別れた。
 改めて自分の腹部を撫でて、新しい命が息づいていることにありったけの幸せを感じる。

 家に帰るとすでに真田は帰っていて、リビングからテレビの音がもれていた。

「少し遅かったな」
「ああ、ごめん。つい話し込んじゃって」

 一応の決心をつけたといっても、やはりいざ言い出すとなると上手く言葉が出てこない。

「あのね、真田。俺真田に言いたいことがあるんだけど……」
「うむ、奇遇だな。俺もちょうどおまえに大事な話があったのだ」

 しばらくの沈黙の後、真田がわずかに目をそらしながら幸村に小さな箱を差し出した。

「その、お、俺と…結婚してほしい」

 受け取った小さな箱の中には、きらりと光るダイヤの指輪が鎮座していた。

「……さなだ、あのね」

 俺、あかちゃんができたよ

 そう言った瞬間に瞼から涙が溢れてきて、目の前が見えなくなっていく。

「そ、それは本当か!?」
「まさかこんないいタイミングで真田がプロポーズしてくるなんて思わなかった」

 付き合い始めてすでに五年という月日が流れ、いつ結婚を切り出そうかと気を揉んでいた矢先の妊娠。言い方は悪いけれど、これで結婚に対する踏ん切りがつくような気がしていた。

「うれしい…これでやっと真田と“家族”になれるんだね…」

 涙でぐちゃぐちゃになった顔を真田の指が拭って、幸村の顔が弛む。

「な、名前を決めないといけないな」
「ばか、まだはやいよ…男の子か女の子かもまだわかんないんだから」

 幸村は真田の手を力強く握って、唇に小さくキスをふらせた。



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2012/8/26
御題はJUKE BOX.様より


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