■ 君にだけ僕の体温を預けよう

 立海大附属中学の校門前の脇で、不二はなるべく人目につかないようにひっそりと立っていた。
 時刻は夕方五時。立海大のテニス部の今日の練習は休みらしい。不二は東京から電車を乗り継いで、神奈川までやってきた。週末にかけて幸村の家に泊まらせてもらうのだ。
 青学の制服ではやはり目立ってしまうようで、通り過ぎていく生徒らの視線が痛い。
 さきほどきたメールによると、不二の待ち人はあと十分程度でこの場に到着する予定らしい。
 鞄を提げる手に、無意識に力がこもった。

「あ、まった?」

 足元を見つめていた顔をあげると急いできたらしい幸村が息を切らせながら不二の前にいた。
「ううん、今きたところ。そんなに急がなくたって大丈夫だったのに」
「不二と一緒にいる一分一秒を無駄にしたくないだけだよ。ただでさえ会う時間少ないんだから」
 幸村は早々に息を整えると不二の手を引いて歩き始める。
「幸村くんの家に泊まるの、はじめてだからちょっと緊張してる」
「別に襲ったりしないから安心して。あ、でも不二のパジャマ姿とか見たらたえられないかも」
「幸村くんがいうと冗談にきこえないや」
「冗談だって思えるのも今の内さ」

 幸村は周りから見えないようにテニスバックで隠しながら、さりげなく手を繋いでくる。
 不二はそれが嬉しくて、思わず頬が弛んでしまった。
「僕、幸村くんになら襲われてもいい」
「そんなこと軽々しく言って、あとで後悔しても知らないから」

 幸村は不二の指に自分の指を絡めると、血が止まってしまうんじゃないかって心配になるぐらいに手を握りしめた。



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2012/8/26
御題はカカリア様より


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